鳥カゴの中はいつも空っぽ

たとえば空が感動的に青くてもココロの穴はふさがらない

人生はカオス

訳あって、生まれ育った地に滞在している。一日も早くここを出たくて遠方に職を見つけて以来、ほとんど長期滞在はしなかったのに。まだしばらくはここにいる事になりそう。死ぬ時にこれまでの事が走馬灯のように流れる…と言うけれど、ここで過ごしていると様々な事を思い出す。いつ死ぬかもわからないので閑に任せて自分の半生(正確に言えば半分以上)を振り返ってみようかな。

 

 

思い出の天王寺動物園

シロクマ いっちゃん

子供の頃、週末はよく西成のおっちゃんとおばちゃんの所に泊まりにいってた。おっちゃんの所には子供がいないからか、すごく可愛がってくれた。ここでの楽しみはいくつかあって、その一つが天王寺動物園。あの頃、子供はタダだった。地下鉄の動物園前駅を出て、何故かいつもトイレの臭いのするトンネルを抜けて、ジャンジャン横丁を通り抜けて、通天閣が見えてきたら右に曲がる。動物園の入り口は大きいなぁと子供の頃は思ってた。近づくにつれアシカの「オウッオウッ」という声が聞こえてきて、ワクワクしたなぁ。

コロナの恐怖が始まってからほとんど引きこもり状態だったけど、吉村知事が、感染対策をシッカリして出かけて下さいと言っていたので、お言葉に甘えて思い出の地に出かけてみた。

ホッキョクグマの名前は551のイッちゃん、キリンさんはハルカス、地元愛を感じる動物園。印象的だったのは、飼育員さんが書いたであろう動物の説明図。愛情溢れるイラスト付きで、ツキノワグマに至っては、イラストと実物が同じポーズという秀逸さに笑ってしまった…

コテツさん ツキノワグマ

子供の頃「てんのうじどうぶつえん」というタイトルの絵本を買ってもらった。その最後のページに動物園のイラストマップがあって、通天閣のてっぺんから動物園を見下ろしてるお猿さんの絵が描いてあった。素直(あほ)な私は、通天閣にお猿さんがいる!と信じていた。そして後日、通天閣に登った時、猿はいないという事実にショックを受けた。大人は嘘つきだ。

通天閣 猿


 

昭和の大阪

動物園の帰りに時々スマートボールをやらせてもらった。台の前に座ると、白い硬い球をゴトゴトゴトと入れてくれる。レバーを引いてパッと離すと、白いボールが勢い良く転がっていく。ピンの間をぬけながらボールが行きたい所へ行く。ただただ白いボールがゴトゴト転がるだけのシンプルなゲームなのに、面白かったなぁ。

おっちゃんの教えその1
「えぇか、うどん屋ではな、“すうどん”たのむんやで。これにな、ネギと天かす入れるのが一番うまいねん。肉うどんなんかあかんで、甘いのはあかん。」確かに、天かす入れたうどんはうまい!

おっちゃんの教えその2
「焼肉はハラミがうまい。ロースはあかんで。大人はテッチャンとミノやな。子供はハラミにたっぷりタレつけて、白飯にしっかり味つけてな、ハラミ3切れでどんぶり二杯くらいいけるんやで。」確かに、焼肉のタレは魔法みたいにうまい!

ずぼらや

当時、西成の銭湯に行くと、背中に絵を描いた人がいっぱいいた。それが何を意味するかなんて、子供には分からない。ある日、すごく素敵な絵を発見した。「おっちゃんの背中の絵、きれいやなー。」と言ったら、頭が泡だらけのままその男性は振り向いて、「そうか、分かるか。」と笑ってくれた。残念ながら絵柄は記憶にないけど、線が細かくて色が鮮やかだった。そう言う絵柄は時間がかかるし、彫り師の腕も要求されるから、お金と根性の象徴ってことだったのかな。念のため、私の叔父の背中には絵はなかったです。

もう一つ、おっちゃんとおばちゃんの家には猫がいた。タマという名前のキジトラさん。タマはものすごく賢い猫だった。玄関に濡れ雑巾が置いてあって、外から帰ると必ず足を拭いてから家に入る。通り道に置いてあるだけでしょって思うかもしれないが、違うんです。古い家なので、ガラガラと音が鳴る引き戸の玄関を入ると、三和土になっていて、そこから中庭に繋がってるという構造。タマは中庭から外に出て巡回して帰ってくる。中庭から直接部屋に入ることもできるけど、タマは必ず玄関にまわって濡れ雑巾で足を拭く。雑巾のサイズは普通にタオルを四つにたたんだくらいのサイズで、上がろうと思えばどこからでも上がれるのに、絶対にそこで足を拭く。その上を歩くのではなく、シュッシュッと拭くんです。何度も見たから間違いないです。

 さらにもう一つ、おっちゃんとおばちゃんの家のすぐ近くに映画館があった。当時、春休みや夏休みに「東映まんが祭り」という子供向けの映画をやっていて、いくつかのアニメを上映していた。で、映画館の人がおっちゃんの知り合いということで、顔パスで映画を観れたんです。今考えてみると、どーゆーことやねん!?って感じ。でも、一日中座っててもいいから、好きなアニメは何回も観たりした。もしかしたらちゃんとお金払ってくれてたのかな。いや、でも、出入り自由だったなぁ。

 

案外いろいろあるみたい

この家はあんまり好きじゃない。幼い頃から過ごした場所だから、ここにいると思い出すことがたくさんある。いいこともイヤなことも、文字にしてみると何かいいことあるかな。とりあえず時間潰しにいろいろ書いてみようか。